トリップ
すると、リクが急にピクリとしたように向こうの方を向き、目を丸める。
そして、何を思ったのか腕でエリカを包み込み、壁の後ろに隠すように押し込んだ。
「なっ・・・にぃ!?」
「隠れて」
耳元で囁くようにして、出てこないように言う。
エリカがもがいていると、校舎の出口の方から先輩と思われる少女達が三人で歩いてくる。皆髪をロングにして、髪の毛を明るい茶髪にしており、いかにもギャル系といった感じだった。
その少女達がこちらに気付き、リクを見る。
「あ~ッ!あの子リク君じゃね?」
「一人で何してるの~?」
「・・・何もだ。」
「良かったらさ~、あたしらとどっか行かね~?」
「断る」
少女達の誘いに、リクは即答した。
壁の向こうで話を聞いていたエリカは、内心で何故かホッとする。
リクに誘いを断られた少女達は、黄色い声を上げて話しながら帰って行く。
「やっぱクールだわ~!」
「カッコイイ~♪」
確かにそこは普通に見ても言える、とそう思うエリカがいた。どうやら、孤独感を漂わす彼でも、さすがにあの集団と混じるのは嫌らしい。
一見平然とした顔の彼からあのような淋しさを感じさせられるのは何故なんだろう、と後々知ることを今考える。