貴女に捧げる夜
『あとさ、リョータは殆ど私の名前呼ばないよね。普段もそうだけど、Hの時は
特に』




そうだった。
付き合いたての頃、あまりにも積極的な彼女に何となく照れてしまって
名前呼ぶのが苦手になっちゃったんだ。



『そうだっけ?』
『そうだよ』



とぼける僕と、
ムッと膨れる彼女。




『そんなことないよ。アスカ』

『今頃呼んだって遅いよ』

『アスカ』

『…返事しないからね』

『アスカ。可愛い』

『そんなの言ったことなんて、
殆どなかったくせに』

『アスカ。好きだよ』

『最低』

『アスカ。アスカはさ、本当に可愛いから…自慢の彼女だったから…』



幸せになってね



最後の言葉は彼女の唇で塞がれて



『リョータ、大好きだったよ。
今までありがとう』


涙を零しながら
彼女は笑ってたんだ。







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