CHATEAU LATOUR
「…彩音」



凪は私の名前を呼ぶと、自分の左手で私の左腕を軽く掴んだ。



「手当て、しないと」



「…」



私は黙ったまま窓の外へと視線を戻した。



凪は、私を自分の方へ向き合うように座り直させ、丁寧に私の血で染まった左腕の袖を捲り上げる。



そして、袖の捲られた腕に凪の右手がそっと添えられた。



手首に何ヶ所も刻まれた赤い線。


その傷口からは、赤黒い血が凪の右手を赤く染めている。



私はただ、彼の骨張った手が添えられた自分の左腕をボンヤリと見つめていた。





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