気付いてよ
「ただいまー…あれ?」
職員室から教室に着くと、そこに奏の姿はなかった。
職員室からの帰り道、俺はばっちり今日は奏と帰れるってことだけ考えてたから、先生の小言だって聞き流せた。
でも実際はそんなにうまくいくはず無くて。
教室に奏はいなくて、その代わりみたいにさっきまで勉強してた机の上に置手紙があった。
<用事を思い出したので帰ります。きちんと授業は聞くように! 奏>
とだけ書いてあった。
用事なんてない。
直感的にそう思った。
避けられてるだけだって。
多分この直感は、悔しいけど間違ってない。
どうすれば出来てしまった溝を、建ってしまった壁を取り除ける?
問いかけても返事なんて無くて、答えを聞きたい人は近くにはいなくて。
色んなことが頭を駆け巡ったけど、俺はバカだから考えるのは性に合わないみたいだ。
それに、職員室にいた時間はそんなに長くないはずだよな。
だったらまだ近くに居るかもしれない。
頭で考えて答えが出ないなら、行動するしかない。
我ながら単純だと思もうけど、これしかないから。
俺は勉強道具を鞄にぐちゃぐちゃに詰めて走り出した。