気付いてよ
俺には残念ながら、2人を後ろから追い越すなんて度胸も見栄も持ち合わせてなくて、映像の巻き戻しみたいに元来た道を仕方なく戻った。
昇降口はガランとしていて、今の俺の切なさに追い打ちをかけてくるみたいだった。
「はー…キッツいなぁ。」
しゃがみこみながら俺は独り言ちた。
妙に響いてそれがなんだか滑稽だ。
片想いってこんなに辛いのか。
もうさ、今までの思い出とか、この想いとか消去できたらいいのに。
そんなの絶対無理なんだけどさ。
でもさ、もしも出来たとしたら俺はするのかな。
答えはノーだ。
考えるまでもない。
だって、奏の笑顔も泣き顔も、怒った顔だって全部綺麗さっぱりなくなったら、それはもう俺じゃない。