気付いてよ
なんだよって言うのが精一杯で、ここまで来たらもう引き下がれなかった。
「切り替えが早いなんて、幸村くんだけには言われたくない!それに、付き合ってようが、付き合ってなかろうがあなたには関係ない。」
その通りだ。
奏の言っていることは正しい。
でも、“関係ない”その一言が決定的過ぎて、そう言わせたのは俺なのに。
もう俺たちが元に戻れないことを突き付けられたみたいで頭が真っ白になった。
「私のこと幼馴染としか見てないんでしょ?放っといてよ!」
大倉くんごめんね、行こう、そう言って2人はまたマンションの出口、元来た方向に行った。
もう無理だった。
「ははっ…。」
俺の口から出た、乾いた笑いがエントランスに響き渡る。
生暖かいものが俺の頬を伝う。
こんなことで男が泣くなんて情けない。
でも、情けないと世界中の人に思われて俺の過ちを消すことが出来るなら。
あのときに時間を戻すことが出来るなら、そんなの安すぎる。
バカすぎて、鈍すぎて嫌になる。