月のヒカリ
「それ新作なんですよ〜!」そう言いながらショップ店員が奥から出てきた。
どうやらさっきから20分くらいスカートを手にとったまま立ち尽くしていたらしかった。
「この前入ってきたばっかりだしこれ最後の一着なんですよ?」
ありきたりな営業文句、安い笑顔…そんなものあたしに向けないで。
「じゃあこれ買います」
「ほんとー?ありがとう!これ絶対可愛いよ★何にでも合うし♪♪お客さんセンスあるね〜」
違うよ、ほんとはあなたのその安っぽさから逃げたかっただけだよ
スカートを持ってレジまで向かう店員の後ろ姿に向かって笑った。
あたしまで安くなりたくないだけ
そんなスカート可愛いともなんとも思わない。
そこらへんのスカートと何ひとつ変わらないじゃん
あたしわヴィトンの財布から1万円札をカウンターの上に置いた。