--ツミビト--月蝶の舞う夜に
昼が過ぎ、夕闇がゆっくりと広がる村。
椎名 純一
『…では、私達はこれで…娘さんが無事に眠れるように我々も努力します。
葵の母
『遠い場所から…ありがとうございました。
椎名と如月は佐々木家で事情を話し、家を跡にした。
二人は昨日通った土手の道を歩いた。
しかし、昨日よりは長い道のりである。まだ夕方だが道や回りは暗い。
椎名 純一
『被害者の家族…なんかよく分からない反応だったな。
佐々木の家族は当たり前だが悲しんでいた、だが悲しみの気持ちと共に諦めの気持ちがあるように見えた。
まるで葵が死んだことを始めから知っていた顔だった。
椎名 純一
『…考えすぎか…。
この村に来てから考えることが増えた。
…それだけ謎があるんだがな。
歩き続けて30分、ようやく昨日の橋に着いた。あとは10分程度で交番だ。
だが二人は人影に気づいた、土手は視界を阻む建物などは無い。周りは180度、綺麗に見える。
だから人影など簡単に見える。…服装も。
如月 卯月
『し、椎名さん!!
椎名 純一
『見えてる…あまり嬉しいとは言わないが。
黒いレインコートを纏う、この村の監視者『封花隊』の人間の姿だった。