--ツミビト--月蝶の舞う夜に


時雄
『ね…姉さん。

時音
『お姉様!!


威厳とした態度で椿は二人に歩み寄った。

1度、椎名を見たがすぐに二人に視線を戻した。


六十院 時音
『お姉様…何故、ここに?

六十院 椿
『土手を歩いていたら…彼が私に手招きをしていたからよ…。


椿が子供の頭を撫でた。

成る程…「すぐ来るとは」、こういうことか…。



六十院 椿
『それより…これは?

椿は死んだ猪を指した。


六十院 時雄
『死んだ猪だよ…臭くて臭くて…姉さん。「アレ」ある?


そういうと椿は持っていた包みから白い粉を取り出した。


六十院 椿
『ちょうど、あったからよかったわ。ちゃんと撒いてね。


すると、時雄は死んだ猪の死体に白い粉を撒きはじめた。


椎名 純一
『…粉…石灰?

子供A
『これは村の特産品で『輪舞粉』と言われてて…防虫と腐乱防止に役に立つんですよ。


椎名 純一
『へぇ…防止と腐乱…腐乱防止……!!


その時、椎名の中で1つの疑問が解けた。


朝の死体で感じた不信感の答え…それは「綺麗すぎた死体」



確かに意図的に綺麗にされた死体だった。

だが、それ以上に死体が全く腐乱していない。


首を切断、残りの部分を廃除、顔に化粧を考えて死んだ死体は死後5時間以上は経っている。

こんな暑い中で全く腐らないのは不自然。

これが椎名と如月が感じた不信感の答えだった。
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