--ツミビト--月蝶の舞う夜に
椎名は住宅地を抜け、雑木林の道を通る。
大きく迂回する土手を使わないためにかなりの短縮になった。
しかし、夏の夕方には見えない程に道は暗かった。
月は綺麗に見えるのに太陽は当たりにくい…おそらく近くの山「鋤羽山」が原因だろう。
椎名 純一
『…間に合いそうだな。
そう思った椎名の目におかしな光景が目に入った。
何処かの制服を来た少女が雑木林を無理矢理、登っていた。
かなりの軽装であり、しかも暗くなっている山に登るなど危険でしか無い。
椎名 純一
『おーい、こんな時間に登山は危ないぞ!!
椎名の呼びかけに気づいたのか、少女は椎名の方を見た。
そして椎名は少女の異変に気づいた。
椎名 純一
『……!?
目が紅い…
少女の目は紅く、服は血まみれだった。
こいつ…「成虫」の蝶!!
その時、椿の話が脳裏に浮かぶ。
『「成虫」の「蝶」は人を襲う
血まみれの少女はおそらくは既に「成虫」であり、人を襲った後だろう。
ここからではよく見えないが右手に何かを持っている。考えたく無いが状況からだいたい分かる。
椎名 純一
『…まずい。
自分に迫る危険。
一椎名は腰に潜む拳銃を握った。
血まみれの少女
『…ひゃ…ヒャハハハ!!
同時に血まみれの少女はこちらに向かって走り出した。