制言師は語らない
「そうよ。私が妖艶なる制言師の後継者フォーフールズ・イクスォールよ」

「四聖愚者《フォーフールズ》を冠するか。しかし、妖艶の制言師の後継者を名乗るには、かなり成長が足りんのう」

「ふん、そんなのは時間の問題なのよ。成長はこれからするんですからね。重要なのは、今ここでの勝負だわ」

 場内は、二人の言い合いにぼう然としている。いいのかな、かなり個人的な言い合いばかりしてて。

「あのさ、フォウ、そろそろ試合を始めないと・・・」

「あら、試合ならとっくに始まってるわよ」

「そうなのですか、師匠」

「伊玖麿よ。だから、お前一人では行かせられないのだ。制言師はその言葉を発したときから仕掛けてきておるのだ」

「よく判ってるじゃない。剣士なんてやめて制言師にでもなったら?」

「この榊原乱厳を降神流本山に引き篭もっておるいるボンクラ共と一緒にしてもらっては困る。降神流の根源思想は強さに対する進化にあるのじゃ。さあ、伊玖麿、ゆけ」

「はい、師匠」

 伊玖麿がゆっくりと前に出ながら、腰の刀に手をかける。少し腰を落として、足を自然に開く。

 これが、噂に聞く居合の構えか。

 確かに隙が無い。


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