制言師は語らない
「カーンも構えなさい。思ったより、間合いが長いわよ」

「う、うん」

 ぼくの剣は雷神流独特の肉厚で両刃の両手剣。鍔元から少しだけ刃の無いブレードがあり、その先から両刃のブレードが伸びている。

 この重い両手剣を稲妻の如く高速で操るのが、雷神流の特徴なのだ。

 背負っていたその剣を剣止めから外し、中段に構える。

「いつも思うけど、重くないの?」

「慣れちゃえば重くないよ。それに、見た目より軽いんだよ」

 試合前に余計な事を聞くなぁ。

「それなら平気ね、最初の一撃で決めちゃいなさい」

「うん」

 ぼくもそのつもりだし、相手もそのつもりだろう。居合は第一撃で決める技と聞くし。

「伊玖麿よ、制言師の言葉に惑わされるでない。いつもの通り、自分の戦い方をするのだ。制言師はその言葉で自分の意を相手に押し付けてくる」

「はい、師匠」

 それって、制言師はわがままって事か……よく判ってるな。

「カーン、余計な事は考えないの。相手の剣はまだ鞘に入ってるんだから、あなたの方が有利よ。いっちゃいなさい」

「剣に関しては素人じゃな、制言師。ゆけ、伊玖麿、降神流の抜刀速度を見せてやれ」

 ぼくは、フォウの声に、伊玖麿は乱厳の声に反応して、すり足でお互いに間合いを詰めた。
< 11 / 20 >

この作品をシェア

pagetop