制言師は語らない
「さあ、前哨戦は終わりね。カーンは下がってて、今度はあたしの番よ」
 ふう、何とか無事終わったな。勝負に勝ったし、試合も終わっ・・・

「さあ、前哨戦は終わりね。カーンは下がってて、今度はあたしの番よ」

「えっ、何言ってるんだフォウ。今ので試合は・・・」

「何言ってるのよ。この試合は特別ルールのタッグマッチなのよ。一人ずつ戦って二勝した方のチームが勝ちなの」

「いつの間にそんな事に」

「大体は今ね」

「ほっほーっ、お譲ちゃんなかなかやりおるのう」

 ああ、そうだった。フォウは制言師なのだ。本気の彼女の言葉は従うしかない。

 会話のタイミング、言葉の並び、音韻。制言師はそれらを駆使して、言葉を制する。制された言葉には逆らえないのだ。

 フォウが言うには、それらは制言師の基本的制言術で、一流の制言師なら、無意識に行っていることらしい。

 簡単に言えば、我が侭をまかり通してしまったのだ。

「では、今度はお譲ちゃんと儂じゃな」

「望むところよ。本当の制言師の戦い方を教えてあげてよ」

 相変わらず自信満々だ。でも、制言師の戦い方ってなんだろ。

「フォウ」

「何よ、何言っても止めないわよ」

 それは判ってるって。

「あのさ、何やっても止めないけど、一応剣術大会なんだから、無手だけは駄目なんだよ」

 乱厳さんは腰に太刀を差してるけど、フォウは何も持ってなかった。

「あら、そのくらい判ってるわよ。昔から、制言師の武器は決まってるの。これよ」

 彼女はいつも着ている黒いケープの下から、これまた闇を固めて研いだような、黒いブレードのナイフを取り出した。

 細身のブレードは折れてしまいそうなほど頼りない。

「ほう、それを使えるのか」

 乱厳が感心したように言った。
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