制言師は語らない
「・・・」

 フォウの名を叫ぶが、声として響かない。

 これは・・・聞こえて無いんじゃない。声は出てるのに、何かに打ち消されて聞こえなくなってるんだ。

 フォウも、予想外の展開に驚いてるみたいだ。やばい、言葉が武器の制言師なのに、声が消されるなんて。

 乱厳さんは太刀を抜き放ったまま、にやりと笑い、斬り込んできた。

 よく見ると太刀の刀身が霞むように震えている。無音の原因はあれのようだ。

 突進からの鋭い斬撃がフォウの身体を袈裟懸けに斬る。

 同時に甲高い耳鳴り。

「フォウ!」

 あ、声が聞こえた。

 フォウは・・・ほっ、無事みたいだ。

 彼女は手にしたナイフで、乱厳さんの斬撃を受けていた。

 まてよ?剣の達人である乱厳さんのあの斬り込みを剣術どころか身体を動かすのも苦手なフォウが普通に防ぐことなんてあり得ない。

「抜刀の動作で、刀身に周囲の音の逆位相を響かせるなんて、随分味な真似してくれるじゃないの」

「ぬう、身体が・・・、何をした制言師。言葉は訃音律で封じたはずだ」

 二人は互いの武器を交差させたまま言った。

 どうやら、乱厳さんは身体が動かないらしい。

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