制言師は語らない
「実はね、あたしはこのナイフの使い方を知らないのよ」

「なんと」

「これはお祖母ちゃんが残してくれたもので、お守り代わりに持ち歩いてるだけなのよ」

「ぬぬ。この試合での制言師対策は万全だったはず。いったい、どうやって」

「制言師はね、その場で語らなくてもこのくらいのことは出来るのよ」

「そうか、先読みか」

 先読みって・・・確か相手の言葉の出だしを聴くだけで、その後の言葉を全て理解してしまうっていう奴だ。

「ちょっと違うわ。これが、舞言《ぶごん》よ。リアルタイムに先読みで論理的に推論された展開を更に言葉で補正して、自分の望む展開に操作する高度な制言法よ」

 フォウはその大きなアーモンドアイで、にやりと笑ってナイフを収めた。

 太刀を構えたまま身体が動けない乱厳さんは悔しさに、顔を歪めた。

 つまり、今までの会話の結果、乱厳さんがあそこで身体が動かなくなるように仕向けたって事か。

 先読みの結果を補正しながらとは言ってたけど、基本的に、ただの会話のタイミングだけで、こんなことが出来るなんて・・・制言師を敵に回すのは止めておこう。
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