制言師は語らない
 う、ぐさぐさとぼくの素直な心に悪意の矢が容赦なく刺さる。

 言われ慣れてるとは言え、毎回傷が深くなっていく。ああ、早く一人前の絵師になりたい。

 そうすれば、少なくとも自立はできるかもしれない。

 そんな弱気な考えを知ってか知らずか、フォウは言った。

「だいたい大元の絵師になりたいのところが間違ってるのよ。下手なくせに」

 そ、そこまで言うか・・・確かにぼくはまだ未熟かもしれないが、下手呼ばわりされる程ではないぞ。しかし、心の中で反論しただけで声に出すには至らなかった。

 言い終わった彼女の顔が、急に曇ったからだ。

「・・・う、あ、ごめん。言い過ぎたわ・・・先読みの能力が強くなってきてるから、言葉に流されちゃうのよね。気を付けてはいるんだけど・・・」

 今まで元気の塊のように生き生きしていたフォウは今にも泣き出しそうにしゅんとしていた。

「き、気にしてないよ。フォウのことは判ってるさ、心からそんなこと思ってないって。確かに、絵の方は修行不足かもしれないけど、いつかは画聖クー・スー・ニーのようになって見せるよ」

「うん、ありがと、でも画聖クー・スー・ニーは言い過ぎじゃない?」

「確かに、そうかも」

「そうよね、せめて剣の腕ぐらい絵も上手くなれば自立できるわよ」

 いつもの屈託のない笑顔で言った。

 うん、やっぱりフォウは笑顔が一番。

「それで、対戦相手の名前は?」

「えーと・・・」


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