制言師は語らない
 あれ?この字はなんて読むのだろう。東部トルバキア風の楔文字で表記されていて、判りにくい。

「ちょっと、どうしたのよ。まさか、あんた、字も読めなくなったの?」

「えーと、ここが母音で、子音の分岐があるから・・・」

「ちょっと貸してみなさいよ」

 フォウはぼくから組み合わせ表を引ったくるように持っていった。

「あら、随分珍しい書式じゃない」

「だよね、だから読むのが難しくて・・・」

「あのねぇ、読むのは簡単よ」

「そうなのか」

「でも、この書式は呪詛返しの韻を含んでるから、このままだと術式に組み込めないわね」

「へぇ、そうなのか」

「このやり方、今は余り使われてないけど、どう考えても、制言師対策ね」

「じゃあ、こいつは制言師が見るのを判ってたって事?」

「そういうことね」

 伏し目がちに、フォウが笑みを浮かべる。

 やばい、こういう顔をした時は、ろくなことを考えていないぞ。

「フォウ、もういいよ。明日対戦すれば判ることだし・・・」

「あら、これからいいところじゃない。あたしも乗ってきたわ。この対戦表借りるわね」

「え、でも・・・」


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