SICK&TIRED


ほんの少し

ほんの少しだけ苦しかったけど

それよりも泣きたくなるほどの切なさが襲ってくるのがわかって

「もう・・・やだ・・・」

と声にならない声を出した

聞こえるか聞こえないかほどの吐息に近い声だったのに、聞こえたのかな??


アタシの耳元で「アイツと別れて・・・・・」というセリフは、まるで告白みたいで

彼女がいる男の言っていい事じゃないのは明らかだし

そんな男の彼女は妹だし

なのにアタシの心臓は沸騰した血を全身に押し出すし



もう・・・

感情も

言葉も

どっかいっちゃえ・・・・・・



まことの友人たちが遠ざかったのか腕の力が少しゆるんで、とうまくんの澄んだ瞳が苦しそうに細められてアタシを見下ろしている

何か言おうとしているような、言葉を探しているような、そんな彼の唇を見つめると、そこに触れたくなる衝動に駆られて本能のまま動こうとする指先

かすかに残っていた理性でその指を触れ合う胸の間にさしこむと、力を込めて押し返した


アタシの体に彼の石鹸の香りの移り香


口を開けば、言ってはいけない言葉がでそうな気がして・・・・

足の痛みなんて、この胸に押し寄せる感情に比べたらちっぽけで、とうまくんに背を向けて走り出した



振動で激しく痛む足のせいか、どうしようもなく溢れてくる彼を焦がれる気持ちのせいか、全身があわだって、熱がこみあげてきて制御しきれない




その優しい目は

その温かい肌は


どうしてあなたは、妹の彼氏なの????




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