SICK&TIRED
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大学に入って間もない頃、高校のときにあったそれとは格段に違う豪華な食堂で友達と飯を食いながら一人の女を見つめ続けていた
窓際の席で男たちが大声で笑いあってるその横で、頬杖をついたままニコリとも笑わず窓の外を見つめて動かない女
「なあ、あれ、知ってる?」
「あれ?」
入学式のときに話しかけられて友達になった春樹に聞いてみる
出会ってすぐわかったのは、こいつが大学内の情報に異様に精通していること
まるで芸能リポーターのように「あいつとあいつは不仲で、あいつとあいつは付き合っていることを隠している」とか指差して説明してくる
その情報の幅広さときたら学年も関係なく大学内全域にまで及んでいるから感心とともにたまに怖くなる
「ああ…、堀内まことの彼女だろ?でも、女の方の名前はしらねえな」
いや、男の方の名前を知ってるだけでもすごいと思う
「男の方はさ、なんでも超~ヤキモチ焼きらしくって、彼女が他の男と立ち話してるだけでもぶちぎれて暴力振るうってうわさ」
「暴力?」
「ま、うわさだよ」
再びそちらに目をやると、男たちは立ち上がってテーブルの上のものを片付けようと持ち上げているところだった
そんな様子にも気づいてない女は一人座ったまま外を眺め続けている
ぼーっとした女だな
横に座っていた男が彼女の肩を叩いて一言何か言ったようだった
その瞬間顔をこちらに向けた