SICK&TIRED
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「おいっす!」
座っていると背後から声をかけられた
ふりかえると春樹が後ろに座っている
なんとなく楽しく会話する気にならなくて「おお」と軽く返すとまた前を向いた
「朝見たよ、とうまの」
片思いの相手 と、最後は声をひそめてそう言った
俺は聞こえてない振りをする
「男とただならぬ表情で歩いてたわ」
その一言で俺は体を春樹に向けた
相手はしたり顔
「それどこ?」
俺の質問に今度は眉根を寄せる
「どこって、お前、行く気じゃねえだろうな」
首をつっこむなとでも言いたげな口調に苛立って、俺は真剣な顔をした
「おい春樹、これは冗談じゃねーんだよ……
あの子、マジで男に暴力受けてんだ」
春樹はますます眉間にしわを寄せていく
「……マジ?」
「お前も言ってただろ?儚げで守ってやりたくなるタイプの女だって」
「い、言ったけど」
俺は春樹から視線をそらして息をはくようにもらした
「あんな弱い女の子が、男に暴力ふるわれてんだよ?
お前、それ見てほっとける?」
「講堂の、控え室…たぶんそこだと思う」
春樹はそう言って黙った