SICK&TIRED
TIRED 1
気づくと時計は12時をさしていた
昼の?
夜の?
一瞬迷ったけれど、この部屋の深い闇に気づけばそれは一目瞭然
12時間以上寝た
夢は見なかった
見れないほど、落ちていた
傷は少し痛む
胸はもっと痛む
過剰気味の睡眠に体はだるいけど
頭はクリアー
マナーモードのままの携帯が振動している音が聞こえて、ベッドから腕だけをのばしてカバンを引き寄せると暗闇の中手探りで取り出した
画面には“まこと”の文字
「はい」
「今どこ?」
「家」
「じゃあいいけど、寝てた?」
「うん……あれからずっと」
電話の向こうから、安心したかのようでバカにしたかのようなよく聞き取れないため息が流れてきた
「できれば、俺が電話鳴らした時は10コール以内で出てくれない?
不安で何しでかすかわかんねーから」
何が、不安なんだろう
アタシをここまで縛り付けて、他にアタシに何を求めるの??
答えずにいると向こうからまた声が聞こえてきた
「ま、家にいるならいいけど……」
少しの間を置いて
「切るわ、さき
おやすみ」
相変わらず返事ができずに黙りこくっていると、プツンとシャットダウンされた音が聞こえた
アタシも携帯を閉じて再び枕に頭を沈めた
……つきあいはじめの頃みたい
最初はこうして、夜におやすみの電話をくれていた
ほんとに最初だけだったけど
そのまま再び眠ってしまった