花には水を




家に着くまで、私たちは何一つ会話をしなかった。




聖夜兄は何かを堪えるように歩き、私は父さんの涙を見て茫然としていた。






一人で夜向かう母さんの元。




この道を父さんは何を思いながら歩いていたのだろう。




どんな気持ちだったのだろう。







それは本人にしか分らない事。





私たちが見ていた父さんは…





強がっていたというよりも…。





やり場のない悲しさを募らせていた。






ひとくくりには纏められない感情を、必死に制御していた。





そんな父さんを見た、夜だった。









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