花には水を



手を合わせていた私の後ろで、土が何かと擦れる音が聞こえた。




目を開けて振り向くと、そこには花を片手に静かに微笑む聖夜兄が立っていた。





「…灯も来てたんだな」




そういうと、もう片方の筒の中に花を挿した。





そっと手を合わせて目を瞑る聖夜兄の横顔は普段とまるで違う。





綺麗な顔に、切なさを含んでいた。






「聖夜兄、会社は…?」




目を開いた聖夜兄に私は素直な質問を向けた。




「途中退社してきた。仕事仕事って言ってらんねぇーからな、今日は」





小さく背伸びして、立ち上がった聖夜兄は私に言った。








「うっし、久々に外食しますか!」








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