花には水を
すると彼の足も止まり、恐る恐る背けていた目線を彼へと戻すとそこには驚いたような、悲しげな顔があった。
「…灯、どうしたの?」
連の口が開き、私の名前を呼ぶ。
その声に私の体はゾクッとして、さっきよりも大きく手が震えた。
と、連の声に教室に居た人達も現れ私を見た瞬間、真っ青に染まっていった。
「…た、立花…先輩」
さっき聞こえた、男の声。
連が私の事をどう言っていたかと、やたら可笑しく話していたその声。
私は耳を塞ぎそうになった。
聞きたくない…!
もう、誰の声も…!!
私は、ぎゅっと目を瞑り走った。
連を見ずにその横を逃げるように走った。
「灯!」
近くから聞こえた私を呼ぶ声に足を止めず、ただ夢中に走った。