花には水を


私はムッとすると、


「唯一じゃないもん」


と抗議した。



だけど、そんな私をみて瑞穂は「じゃあ、他には?」と尋ねてきた。



う…



確かに…友達って言えるのは瑞穂だけだけど…。



瑞穂の問に答えられなくなった私におじさんは、ハッと笑って瑞穂が置いていたお金を手にとった。



「負けてやんの」


そして、私をみるとそういってニヤリと気味の悪い笑みを浮かべた。



「ま、負けてないし」


それに対して私も言い返すと、その様子を見ていた瑞穂がプッと吹き出した。



「な、何?」



怪訝そうな顔をして言う私に、瑞穂は「何でもない」と笑っていた。




そして、私たちは奥に続く入口に入っていくと並ぶ椅子に腰を下ろした。




そのときハッとして私は瑞穂に顔を向けた。



「みず…!」



名前を最後まで言い切る前に、私の体は固まった。




私の声に反応してこちらを向いた瑞穂と私の顔の距離が思ったよりも近くて。








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