花には水を
遠くに見えるのは、誰なんだろう?
こっちを見ているのは、誰なんだろう?
見たことのない人。
全てに疲れきったような表情をして、目は虚ろで。
こんな人を、今まで見たことがない。
絶望、失望、憎しみを含んだような瞳。
ゆっくりと動いた唇が静かに言葉を語る。
“ この世界に幸せを求めちゃいけない ”
口が閉じた瞬間、私の瞼は開いた。
「…あ、かり?」
目の前に現れたのは、安堵の笑みを浮かべた聖夜兄だった。
此処は何処だろう?
聖夜兄の顔を見た後、私は薬品の臭いに気がついた。
そして、チクッと痛む右腕で私は病院にいるのだと納得した。