花には水を
そんな光景を、また安心した表情で聖夜兄は見ると側に居た看護師さんにお礼を言った。
「ごめん、迷惑掛けた…診療費とかは私がバイトして返すから」
その言葉に聖夜兄は一瞬強ばった顔をして顔を伏せると何も言葉を話さなくなった。
その不穏な空気を感じたのか看護師さんは「お大事に」という言葉を残して病室を出ていくとシン…と静かな間が流れた。
何も話さない聖夜兄。
突然黙ってしまった聖夜兄に困惑する私。
と、急に口を開いた聖夜兄は私を見ると眉を潜めた。
「…んだよ、それ」
怒ったような、悲しいような声で投げかけられた言葉に私は瞬間にして声を失った。
何故聖夜兄が怒るのか分からなかった。
「迷惑掛けただ?診療費だ?そんなのどうでもいいだろ…。お前は…そういうのも分かんねぇーのか?」
立ち上がって怒りに震えた拳を握りしめて、聖夜兄は言った。
そして、ぐっと悲しそうな目を私に向けた後顔を逸すと小さく舌打ちをして病室を出て行ってしまった。
あんな風に、怒りをあらわにするのを初めてみた。
それでも私にはどうして聖夜兄が怒ったのか、あんなに悲しそうな顔をしたのか…分からないでいた。