花には水を
“ 明日を見る君が そっと空を見上げて
人々の中に混在する 悲しみが
いつの日か 無くなることを教えてと
泣きながらせがむ君を抱いて 僕は明日を拒み続けた ”
この歌は…父さんが歌っていた、あの曲?
…どうして?
小さいけれど確実に聞こえてくる声。
はっきりと聞き取れるその声に、私は一瞬身震いした。
寂しそうな、悲しそうな歌声。
柔らかいのにさめざめと、冷たい感覚に陥りそうになるような…。
様々な困惑と、不安と、絶望と、失望と、空虚といった感情が入りまじているような。
耳をふさいで、聞きたくないと拒みたくなる。
父さんの歌声はこんなのじゃなかった。
だけど、寂しそうに歌っていたのは事実だったけど。
でも、彼の歌声は世の中には何もないと、与えてくれるものは悲しみと絶望だと…。
そう語りかけるような声なんだ…。