花には水を
ふと、急に男性がこちらを向いた。
整った綺麗な顔。
瞳は黒く吸い込まれそうな程、綺麗。
白いその肌。
ゾクッと体が震えた。
歳はきっと、聖夜兄に近い。
25か、6のどちらかのように見える。
彼は私に顔を向けたまままた口を開いた。
“ 君の見る世界は、どうなんだい? ”
語りかけるように。
その声に、私はいつの間にか声を発していた。
“ 貴方は…どうしてそんなに…悲しそうなの? ”
その質問に、フッと微笑んだ彼は私から向けていた瞳を逸した。
薄れていく彼の体に、私は茫然として何も言えずにただ立ち尽くしていた。
彼は消える寸前に
“ ″生"は儚いものだよ ”
と静かな声で囁いた。