花には水を



再び目が開いたときには、聖夜兄は病室に戻ってきていた。



私の隣で椅子に座って寝ている。



その手には、缶コーヒーが握られている。




コーヒー飲んだまま寝たんだ…。



聖夜兄の眉間には深く皺が刻まれていた。




その顔は、なんだか辛そうに見える。



窓の外から漏れる、夕焼けの色が病室を照らす。




「聖夜兄…」



小さな声で囁いた。





ごめんね…。




心配…掛けちゃったんだよね。



空気に溶け込むように私の声は消えていった。



すると、ピクン…と手が動いたかと思うと聖夜兄はゆっくりと顔を上げた。



目が合い、私は言葉を無くす。




どうして…?




目、真っ赤だよ。





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