花には水を
「ふーん。そんな人もいるんだな」
その時の俺は、興味とかそんなのなんか無くて。
ただ呆然とそんな風に思っただけだった。
一日の学校生活も半ば終わりに近づき、俺たちは移動教室として廊下を歩いてた。
そんなとき、またしても良樹が声を出した。
「あの人だよ、ほら」
俺達よりも、大分離れた位置にいるけど此処から微かに見える。
どの人?ときくまでもなく俺は大体予想ができた。
あの人か…。
教室側の窓から見える彼女は一人席に座っている。
何か読んでるのか、彼女のスラリとした体から本の角のような物が少しだけ確認できた。
「周りに誰もいねぇし、なんか空気が恐い気がするんだけど」
良樹はコッソリと俺に耳打ちした。
「…たしかに誰もいねぇけど」
恐いとは思わない。
どちらかというと、なんか何も纏ってないような感じ。