花には水を
「…あ!」
俺が彼女を観察していると、良樹が急にまた声をあげた。
こいつは、忙しいやつだな。
「やっべぇー!憧れの瑞穂先輩!」
良樹の顔がぱあと明るくなる。
その目線を辿ると、そこには俺も目を惹くような男の人が居た。
向こう側の廊下から来た瑞穂先輩とやらは、当然俺たちに気付くことはなくさっきまで見ていた三年の教室へと入っていった。
「瑞穂先輩まじかっけぇー!しかもあのルックスの上に、サッカーとかありえないぐらい上手い!もう憧れ!」
興奮状態の良樹。
呆れたように、「行くぞ」と促す。
すると目の片隅にふと映った二つの人影に俺は目線をむけた。
…どういう事?
良樹のいう憧れの瑞穂先輩。
その先輩が立ち止まった場所は立花灯、彼女の席だった。
瑞穂先輩は優しそうに笑いながら彼女に話しかけている。