花には水を





地面には、雪が薄らと積もっている。


それが余計寒さを駆り立てた。




「…なんか疲れたな。」



目が霞み思考能力も低下中のまま、俺は足を動かす。



そんな最中にふと、脳裏に過ぎった。


そうだ、財布。




財布を忘れてた。


「馬鹿じゃん俺…」



購買に行って買ったあと、財布を机の中に入れたままだった…。



ため息もでないぐらい自分自身に呆れ返りながらも、後ろに向きをかえ直してあるきだした途端…。



前を見ずにいた俺の体に衝撃があった。





「あ、すんません」


顔をあげた俺は目の前で後ろに倒れている女の人がいた。


やば、女だった。


彼女は、立ち上がらないまま。


手を差し出すと彼女はその手をとることなく立ち上がった。




スカートについた雪を払いながらためいきが聞こえた。




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