花には水を
「あの、大丈夫ッスか?」
下を向いたままの彼女に、俺は不安になって訊ねる。
女ってすぐなくし、すり傷とかでも大袈裟だし。
どっか打ってるかもしんねぇしな。
俺のその声に顔をあげた。
瞬間、驚いたとかそんなんじゃなくてなんだろう身体全体が焦った。
「平気です」
無表情のまま俺に言うと、彼女は腕を組んだまま固まってしまった。
え、え…?
俺、ちょパニック。
つか本当に…。
「あの、本当に大丈夫ッスか?」
なんか、近くで見たらすげぇーきれーだった。
だから焦ったんだ。
そう自分に言い聞かせて平常心を保とうとする。
組んでいた腕を解きながら、彼女は綺麗な唇を動かした。
「すみません、送ってもらえますか?」