花には水を




校舎に入って自分の教室に向かう途中。




すれ違う女、何人か。



俺を微かに横目で見ては顔を覆って泣く。




それが俺に本当に向けられているのかわからなかくて、まあなんかあったんだろと適当に考えて歩いていた。





「はよ」



ガラッと開けた教室の扉。



顔をあげた瞬間向けられていた視線に体が硬直したように思えた。




なにかしらの好奇の目。



毛嫌いするような目。



そして同情する目。




「…何?」




溢れた言葉は静かに落ちる。



すると数人の男子が立ち上がって俺の方に笑いながらやってきた。




「な、な!あの立花灯落としたんだって?」




「は?」



「やっべぇな!お前、でさ。あの冷徹女どうやって口説いたの?俺にも教えてよ!」




< 234 / 296 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop