花には水を
校舎に入って自分の教室に向かう途中。
すれ違う女、何人か。
俺を微かに横目で見ては顔を覆って泣く。
それが俺に本当に向けられているのかわからなかくて、まあなんかあったんだろと適当に考えて歩いていた。
「はよ」
ガラッと開けた教室の扉。
顔をあげた瞬間向けられていた視線に体が硬直したように思えた。
なにかしらの好奇の目。
毛嫌いするような目。
そして同情する目。
「…何?」
溢れた言葉は静かに落ちる。
すると数人の男子が立ち上がって俺の方に笑いながらやってきた。
「な、な!あの立花灯落としたんだって?」
「は?」
「やっべぇな!お前、でさ。あの冷徹女どうやって口説いたの?俺にも教えてよ!」