花には水を






腹が立ったというよりも、もう自我を忘れていた。



一人の胸倉を掴むとぐっと自分の方に引き寄せる。



「何すんだよ!」



叫ぶ男の声も微かに耳に入る程度で。




睨んだまま静かに怒りの篭もった声で口を開く。



「灯に謝れよ。…おまえらが笑いにできるような人じゃないんだよ。」



力を入れた拳が震えている。



今にも殴りそうな勢いで怒りを抑え込むように…。





「はあ?何言ってんだよ。遊んでるだけだろ、本当は彼女だとか思ってないくせに。偽善者ぶんなよ。俺が悪いみたいじゃん」



ケラケラと笑って、なぁ?と仲間に同意を求めるように問いかける男。





その見下したような表情に俺の理性も何もかもが吹っ飛んでしまっていた。




いつの間にか溜め込んでいた力を出すように握りしめていた拳を頬に当てると倒れ込むそいつにまた拳を振った。










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