花には水を
「何、4人で1人とやり合ってんの?」
普通の声の調子でいう良樹に、彼らは戸惑ったように目を泳がせる。
「何があったとか、俺今来たから分かんないけどさー。これはないんじゃね?ほら、女子達見てみ?あの表情。全然おまえらの味方って顔じゃないんだけど?」
「あー成る程、おまえら嫌われたいの?んじゃ、俺も連と一緒にその手助けでもしよっかなー」
ごきっと首を鳴らして明るい声で笑いながら言う良樹に、彼らは手のひらをかえすようにそそくさと離れていった。
「そーそ。…そういう風に早く離れろよな」
さっきまでの声とは違う怒気の篭もった声を出した良樹に周りが凍りついた。
良樹は気さくで誰にでも、笑っているような奴だから。
急な変わりようにクラスの奴も俺も驚いた。
それからだれが呼んだのか先生が何人か駆けつけてきたけれど、終わっていた喧嘩と良樹の誤魔化しの効く言い訳に何事もないように済まされた。
だけど、噂は消える事はなく。
聞こえてくる言葉ひとつひとつが耳障りに思える。