花には水を
馬鹿馬鹿しい。
今まで、こんな事思ったこなんてなかったのに。
一生知らなくても良かったのに。
そんな事を考えている私に容赦なく吹く冷たい風。
ズレたマフラーから出る赤い鼻がむずむずとして、私は小さくくしゃみをした。
鼻に手を当てずるっと音をたてる。
ほんと、最悪な日。
「あ、灯」
げた箱から靴をとりだしている時、偶然にも瑞穂に会った。
瑞穂は、いつもの笑みを浮かべて「よ」と片手をあげる。
それにつられて、私も小さく片手をあげた。