花には水を
「今日も、さみーな。ほら、手真っ赤」
ポケットに入れていた左手を出した瑞穂の手は、確かに真っ赤だった。
私も悴んだ手を制服のポケットから取り出して、「同じだ」と笑う。
教室に行く最中、瑞穂が急に足を止めた。
「・・・どうしたの?」
「あれ、この前の・・」
瑞穂が指を指す方向を向くと、そこには木立連の姿があった。
横顔しか見えないけど、確かに彼だ。
反対側から微かに見える赤いメッシュ。
木立連は数人のグループの中で楽しそうに笑っていた。
ズクっと疼く心臓。
ああ、やっぱり彼は私の事なんてどうでもよかったんだ。
あんな風に、笑顔でいられるのだから。