ツンデレ美女の恋愛事情~新・素敵すぎる上司~
嘘から出た真
顔を洗いに洗面所に向かっていたら、お父様がこちらに向かって歩いて来た。

私が笑顔で「おはようございます」と言い、頭をペコリと下げると、お父様も「おはよう」と挨拶を返してくれた。

お父様は、一瞬私とすれ違い掛けた所で立ち止まった。

「望愛さん…」

お父様は前を向いたまま私の名を呼んだ。

「あ、はい」

「私と慎司はうまく行ってなくてね…」

「………」

「それで、あなたにも無愛想にしてしまった」

お父様は私の方に体の向きを変え、真っ直ぐに見詰めて来た。

その瞳は、慎司さんのと同じ灰色がかった黒だった。

「望愛さん」

「はい?」

「慎司の事、よろしくお願いします」

「あ、は、はい。こちらこそお願いします」

私が噛みながらそう言って頭を下げたら、お父様はニコッと微笑んでくれた。

それは、慎司さんや明子さんのと同じく、優しい感じの笑顔だった。
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