ツンデレ美女の恋愛事情~新・素敵すぎる上司~
「車を拾って送って行くよ」

車って、タクシー?

何時だろうと思って時計を見たら、思ったよりずっと遅い時刻だけど、まだ電車が走っている時間だった。

「電車で帰るので大丈夫です」

「その顔で電車に乗るのはどうかと思うぞ」

その顔?

頬に手を当てたら、手がベタベタした。私、泣いてたんだ…

「ちょっといいか?」

「え?」

阿部さんがハンカチを私の目元にそっと当ててくれた。たぶんアイラインが溶けて酷い事になってるんだと思う。

「は、ハンカチが汚れちゃいますよ」

「構うもんか。いいから、じっとしてろ」

「はい…」

私は、泣いた子供がお父さんに涙を拭いてもらうかのように、じっとされるがままになっていた。

そして、お父さんを思い出したら、ひとりでに涙が溢れてきた。
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