ツンデレ美女の恋愛事情~新・素敵すぎる上司~
大通りでタクシーから降りようと思ったけど、阿部さんにどうせだからと言われ、アパートの前まで送ってもらった。

私は、アパートに一人暮らしという事を、阿部さんに知られるのが恥ずかしかった。アパート自体はそれほど汚くはないんだけど。

「今日はすみませんでした」

「いいって。もう大丈夫か?」

もし私が『大丈夫じゃないです』と言ったら、阿部さんはどうするの?

なんて事を一瞬考えてしまったけど、「大丈夫です」と言って私はタクシーを降りた。

「じゃ、また明日な」

「はい、おやすみなさい」



誰もいないアパートに帰り、私はベッドに身を横たえた。

目をつぶると、鈴木さんの嫌らしい手の感触と、忘れたくても忘れられない過去の記憶が蘇る。でも、それを打ち消すように、阿部さんの優しい笑顔と、頭を撫でてくれた時の、手の温もりが蘇った。

今夜見る夢はまたあの悪夢か、それとも……阿部さんの夢かな。

阿部さんの夢ならいいのになあ……

薄れていく意識の中で、そう願う私がいた。
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