マリン【短編】完結
「付き合ってもないのに、デートする意味がわかんない」
ぐっと、腕に力を込めて
密着している新田の体を離そうと試みるあたしに
ニコニコとただ、微笑むだけ。
「力弱すぎて、可愛いな」
なんてつぶやきながら、
あたしを見つめる新田
「教室もどろっか」
そう言って、あたしの手を握り歩きだす新田
本当、自分勝手だ
「あ、篤志先輩だ〜」
「え!?ホントだ!」
「でも、また時任先輩といるー…」
「ねぇ二人ってやっぱり付き合ってるのかな?」
「え〜、嫌なんだけど!」
廊下を歩けば
耳に届くのはいつも
こんな話ばかり
別に好きであたしも
新田といるわけじゃないのに
「新田…手、離してよ」
新田に手を引かれてあるいていたあたしは、急に立ち止まった
「なんで?」
振り返って首を傾げる新田
あたしは俯きながら
ぼそぼそと言った。
「みんな見てるし…」
そんなあたしを引き寄せて
新田は口を開いた
「いーの、俺が見せ付けてんの」
本当、迷惑な話だ。
あたしはため息を漏らした。