夜中散歩
「男?」
「違うよ」
「じゃあ、誰?」
「小雪さん、店で働いてる」
そう答えても、信じてくれない。
「嘘つけよ」
「本当だって!」
声を上げると、驚いたように私を見る小雪さん。
「とにかく、今から学校だから電話切るよ」
一方的に電話を切る。
寝室には、いつでも着られるように制服が置いてある。
ため息をつきながらリビングへと戻ると、綺麗に片付けられたドライヤーがあった。

「修二くん?」
「うん」と答える。修二のことは小雪さんも知っている。
「こんな朝早くから電話かけてくるとかすごいね」
いつも巻かれている髪がストレートに伸びている。
綺麗な茶髪。
「ちょっと束縛がきついんだよね、修二ってさ」
いつの間にか、小雪さんに対して敬語じゃなくなっている私。
それも、「タメ語でいいよ」と言ってくれたからなんだけど。
「大学生でしょ?なのに店来てて偉いよね」
「あんまり店来られても困るけどね」
高そうな化粧品をテーブルに並べる。やっぱりナンバーワンは稼いでる額が違うんだろう。
財布なんか見る度違うし。
「他の客に怪しまれちゃ困るもんね」
うん、と答えると小雪さんは立ち上がった。

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