夜中散歩
家を出てエレベーターに乗る。
「じゃあ、またお店でね」
「はい、今日はありがとうございました」
手を振って、車に乗り込む小雪さんの姿が見えなくなるまで見送った。

姿が見えなくなると同時に急いで階段で部屋へと戻る私。
シャワーに入って、髪を乾かしながら制服を着る。
携帯に充電器を差して鏡をテーブルに置いた。

自分でも時々思う。
学生とキャバクラの両立をしてまで、自分の身を削ってまでどうしてあそこで働いているのか。
何度も何度も考えては、答えを出すのを辞める、の繰り返し。
母親には頼れない。
頼るわけには行かない。

今日は学校が終わったら銀行へ行かなくてはいけない。
雑誌に挟まれた茶封筒を出して、中を覗く。
十万ほどはあるだろうか。
月に二度の実家への仕送り。
そのほかにも、「足りなくなっちゃった」と言われればお金を送っていた。
実際、私は自活をして貯金と洋服が買えるほどのお金を稼いでいる。
住んでいるこのマンションだって、全て自分でお金を払っている。

それでも満たされることがない、孤独ももちろんある。

世の中、お金が全てなんだから。
お金があるからご飯を食べることが出来る。好きなものを買うことが出来る。
稼がなくちゃ意味がない。

私が家を出るまでのあの生活には一生戻りたくはない。
酒に溺れる母を見て、預金通帳を見て。
毎日泡のように消えていくお金を見ながらいつも思っていた。
世の中、結局お金が全てなんじゃん、と。

その為に私は、またあのネオンを浴びる。
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