夜中散歩
だけど、すぐに私の足は止まった。
真希さんの手が繋がれた先に、小さな子供が居たから。
1歳、行って2歳くらいの女の子と一瞬、見間違ったが違った。青い手袋をした男の子。
時間は午前7時過ぎ。こんな朝からどこに行くんだろう。
ホームに行く二人を見て、私も後を追った。
なんでこの人がこんなところに居るのか、どうして子供なんか居るのか。
混乱する私に、誰かが肩にぶつかる。
「すいません」と謝ると、ぶつかったその人は何も言わずに去ってしまった。

急いでエスカレーターを降りると、反対方向の電車を待っている二人。
私は内回りで、真希さんが外回り。
会うのはもう何年ぶりになるだろう。
会ったのは兄のお葬式以来。約2年ぶり・・・
線路を挟んで、私と真希さんが向かいに立つ。
お菓子の袋を持つ子供、それを開ける真希さん。
「ありがとう」と笑う子供の頭を撫でる姿は母親そのものだった。

どうにかして、私の存在を知らせたい。
このまま何も知らないかのように終わらせたくない。
こんな偶然、きっと滅多にあるものじゃない。

家庭を壊した根源ともいえる彼女と、それを実行に移した私。

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