夜中散歩
「今のやつとずっと居たの?」
「・・・関係ないでしょ」
そう言って部屋に入ると、勢いよく突き飛ばされた。
尻もちをつき体を強く打つ。
「ちょ・・・、何すんのよ!」
そう言うけれど、兄は何も言わない。
立ち上がれないままで居ると、腕を掴まれ体が起こされる。
すると右手を大きく振りかざし、私の頬に鈍い音と痛みが走った。
「何・・・?」
痛みよりも、驚きのほうが大きかった。

怒っているんだろう。
だけど、どうして手を上げたのか。
殴られるのは別に構わないけれど、理由も言わずに殴られるというのは自分の腑に落ちなかった。

「・・・お兄ちゃんもそういう人なんだ」
痛む体を無理やり起こして、溜め息を吐きながらベッドに腰掛ける。
「じゃあ私も聞くけど、どうして家に帰ってきたの?バイトは?学校は?」

聞けなかったそのことを聞くと、案の定兄は黙り込んだ。
「黙るんだね、都合が悪いと」
「どうせ学校嫌になっちゃったんでしょ?勉強ついていけなくなったんでしょ?」

「お兄ちゃん、昔から物事続いた試しがないもんね」
「昔からそう、私のそばべったりくっついて・・・正直気持ち悪かったっていうか」
全部を言い終わったとき、自分でもなんて冷たいことを言ったのかと思った。
独り言で終わらせたいけれど兄はその言葉を聞いていた。

罪悪感なんて生まれなかった。
だって全て正しいから。




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