夜中散歩
「何か言えば?仮にも人のこと殴ったんだから」
「・・・あいつのことが好きなの?どこで知り合ったの?あんなやつ満月と同じ学校には居なかったはずだけど」
急に早口になって話し始める。
あんなやつ、拓をそういう風に言う兄。
それがたまらなく自分の怒りに触れた気がした。
あんなやつって何?
初めて会ったくせに、何が分かるの?
「どうなんだよ、答えろよ!」
私の肩がビクッと震えた。
足元を見ていた視線を兄に移す。
暗い部屋からは月明かりと街灯の光しか差し込んでいない。
面倒くさいという感情よりも、もっと淀んだ気持ちが生まれる。
この人は私の何なんだろう。
小さい頃からずっと、私は本当にこの人が嫌いだった。
年が離れた私たち兄妹は、共働きで忙しい両親をいつも見ていた。
仕事が長引いて帰りが遅くなるということはいつも。
それに代わって親代わりをしてくれたのが兄だった。
一人より兄が居てくれた方が心強かったし、嬉しかった。
幼稚園の迎えだって、学校帰りの兄がいつも迎えに来てくれた。
授業参観にいつも参加してくれた。
『満月が寂しくないように』『満月が悲しくないように』
いつも兄はそう言っていた。
その言葉を聞くたび、お兄ちゃんは本当に優しい。
お兄ちゃんが居てくれて嬉しい。と思っていたけれど、そんな時間も長く続くことはなくて。
友達と遊ぶことがなかなか許されなくて、窮屈って感じたこともある。
早く言えば過保護なんだと思う。
大切にされるのは嬉しいけれど、逆にそれが嫌になる。
小さいことが段々と積み重なって、兄のことを『嫌い』と思うようになった。
「・・・あいつのことが好きなの?どこで知り合ったの?あんなやつ満月と同じ学校には居なかったはずだけど」
急に早口になって話し始める。
あんなやつ、拓をそういう風に言う兄。
それがたまらなく自分の怒りに触れた気がした。
あんなやつって何?
初めて会ったくせに、何が分かるの?
「どうなんだよ、答えろよ!」
私の肩がビクッと震えた。
足元を見ていた視線を兄に移す。
暗い部屋からは月明かりと街灯の光しか差し込んでいない。
面倒くさいという感情よりも、もっと淀んだ気持ちが生まれる。
この人は私の何なんだろう。
小さい頃からずっと、私は本当にこの人が嫌いだった。
年が離れた私たち兄妹は、共働きで忙しい両親をいつも見ていた。
仕事が長引いて帰りが遅くなるということはいつも。
それに代わって親代わりをしてくれたのが兄だった。
一人より兄が居てくれた方が心強かったし、嬉しかった。
幼稚園の迎えだって、学校帰りの兄がいつも迎えに来てくれた。
授業参観にいつも参加してくれた。
『満月が寂しくないように』『満月が悲しくないように』
いつも兄はそう言っていた。
その言葉を聞くたび、お兄ちゃんは本当に優しい。
お兄ちゃんが居てくれて嬉しい。と思っていたけれど、そんな時間も長く続くことはなくて。
友達と遊ぶことがなかなか許されなくて、窮屈って感じたこともある。
早く言えば過保護なんだと思う。
大切にされるのは嬉しいけれど、逆にそれが嫌になる。
小さいことが段々と積み重なって、兄のことを『嫌い』と思うようになった。