夜中散歩
授業参観の連絡の手紙を捨てるようになったり、お兄ちゃんと一緒に買い物に行くことさえ嫌になって、家に居る時間も少なくなった。

その度、お兄ちゃんは悲しい顔をした。
その度、私は罪悪感が生まれた。

いつの間にか大学に受かって、一人暮らしを始めて、私と兄は接点が少しずつ消えていった。
それを心のどこかで望んでいた私は素直に嬉しいと思ったし、自由になれると思った。
だけど今、兄は家に居る。
当たり前のように理由も話さず。
前みたいなことが起こるの?
兄が居なくなったことで生まれたものを、この人のせいで失わなくちゃいけないの?
そう考えただけで涙が出そうになる。

鼻の奥がツン、と痛むのを抑えて兄に話しかける。
「出てって」
キョトンとして兄が私を見る。
「私の部屋から出てって」
「・・・拓にメールしなくちゃいけないから」
兄は眉をひそめた。

「どうして?」
「どうしてって・・・明日何時に待ち合わせとか聞かなくちゃいけないから」
顔が自然に笑顔になるのが分かった。
さっきまでそばに居たのに、もう会いたいという感覚。
電気をつけようと手を伸ばすと、兄が私の手を掴んだ。

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