夜中散歩
布団から差し込む光が時間を示す。
結局眠れなかった。
眠ることなんか出来る状態ではない。
隣の部屋では、兄が死んでいる。

携帯を開き、メールを打つ。
『今日会える?』
無理だということは分かってる。
そんな状態ではないっていうこと。気が気ではないということ。
カーテンを開き、まだ寝ている頭を起こす。

制服に袖を通していると、携帯が鳴った。
画面を見れば拓の名前が表示されていた。
「もしもし」
「満月?俺」
落ち着くその声に、固まっていた何かがゆっくり溶け出す。
「いきなりだけど、今から俺が言うこと聞いて」
「何?」
いつものような雰囲気じゃない。
その前に、私たちの『いつも』って何だろう。
正直、今の状態を保つのに必死で。
何かを言われても上手く飲み込める自信がない。

「あの人が誰かに発見されたら連絡して。他にも何かあったらすぐに言って」
急に襲ってくる現実。
兄は死んでいる。殺したのは私たちだ。
いつかは見つかる。鍵はかけているとしても。
それが『他殺』とされるか、『自殺』とされるか。

その判断で、二人の運命が決まる。

「分かった、今日は学校行くから」
「おう」
そう言って電話を切った。


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